少年は世界見る
     
〜シェシュバツァル・フーゴの誰でも分かる魔法講座〜

 


 …フーゴのシェシュバツァルだ。

 なんだかよく分からないが、この世界の魔法について話せと言われたんで話すことにしたぞ。なるべく掻い摘んで話そうと思ってるが、話が話だからな。ややこしい部分も出てくると思うんで耳をかっぽじってよく聞けよ。まあ、それでも分からんという場合はすっぱり諦めろ。それで何か不都合が生じるということもないだろうしな。じゃあ、とっととやるぞ。 

 


 とは言え、まず何から話せばいいんだ…。そうそう、最初は魔法とは何か、という話からだ。

 魔法とはすなわち、 【この世界を構成する『エレメント(元素)』を任意に操作することによって、普通では起こりえない現象を起こすこと】 と、今のところは定義されている。

 この世界の全ての物は、地・空・海・火・樹の要素を組み合わせることによって成り立っている。これはもちろん生き物だって例外ではないんだからな。この五つの要素のことを『エレメント(元素)』と呼び、これらのエレメントが反応することで、風が吹いたり雨が降ったりという様々な現象が起こるんだ。

 このエレメントは目に見える物質としての形の他に、目に見えないエネルギーとしても世界に存在している。これはおれもよく理解できてないんだけれど、見えない要素の粒が空気中に浮かんでいる様子を想像してもらえば分かりやすいかもしれない。場所や時間によってどの要素が多いかは違うみたいだけどな。

 これが魔法を使う時に言う『エレメント(元素)』だ。おれのような『精霊の愛し児』や『精霊使い』などの魔術士はこの『エレメント(元素)』を何らかの方法で操作して魔法を使っている。

 


 ただし何らかの方法、と言っても実は『エレメント(元素)』を操作する方法はひとつしかないけどな。それは『精霊言語』だ。

 『精霊言語』とは名前の通り精霊が使う言葉で、この特殊な言語で呪文を唱えないとエレメントは反応しない。つまり魔法は発動しないってことだ。
 じゃあ魔法を使う奴らはみんなこの『精霊言語』を使っているかと言うと、そんなことはない。『精霊言語』はめちゃくちゃ難しく複雑で、そのうえ人間の声帯では発声することができないからな。

 だから普通は精霊を介して魔法を使う。
 精霊を召喚してかわりに魔法を使ってもらうんだ。これを『精霊魔法』と言い、この使い手のことを『精霊使い』と呼ぶ。
 もちろん召喚したり精霊に魔法を使ってもらうには様々な条件が必要だし、精霊にもいろいろランクがあって、高いランクの精霊は召喚するのもかなり難しい。下手に自分の能力以上の精霊を召喚してしまうと逆に攻撃されることもあるほどだ。
 『精霊魔法』には魔法を使うたびに精霊を召喚するタイプと、精霊に特別な仕掛けをしてもらい呪文などのきっかけひとつで自由に発動できるタイプの二種類があるが、一般的には後者の方がレベルが高いとされている。

 一方、『精霊の愛し児』は『精霊使い』とは違いわざわざ精霊を召喚する必要がない。精霊はいつでも『愛し児』の側にいて、そうしたいと思うだけで精霊の力を借りることができるんだ。だからその力に条件や限界はなく、強大な力を自由に使えるため『術者』同様『特異能力者』と呼ばれることがある。

 魔法以外にも特殊な能力を持つ者は他にもたくさんいるけれどエレメントを使わないものは魔法とは呼ばれなくて、そいつらは『術者』や『特異能力者』と呼ばれ『精霊使い』などの精霊を召喚する魔術士とは区別されているんだ。

 


 これで魔法に関する話は一応おしまいだ。と、言ってもこんな短い間で魔法関連の話が全部できるはずはないのは分かってるよな。だからもっと魔法について知りたいやつは、こっちへ質問を送れ。そうりゃ少なくとも誰かが説明するはずだ。とりあえず、おれはもうごめんだけどな。
 ああ、しかしかなり疲れたな。互いにゆっくり休むとしようぜ。