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上遠野 浩平


 主に電撃文庫などで活躍している上遠野 浩平氏の紹介です。

 上遠野氏と言えば「ブギーポップシリーズ」の作者として有名な方ですね。私はこのブギーPシリーズは大・大・大好きで全巻揃えていたりしております♪

 このシリーズで魅力なのはやはりキャラクターでしょう。異様で、しかしどこか愛嬌のある怪人たち。ひとり孤独に闘う正義の味方「炎の魔女」。そしてその人が人生のうちで最も美しい時に殺す、伝説の死神ブギーポップ。 昔アニメもやっていた人気シリーズなので知っている人も多いでしょう。MPLSと呼ばれる「進化した人々」や統和機構によって作られた「人造人間」の特殊な能力も毎回とても魅力的です。ちなみに私のお勧めの話は、「歪曲王」と「パンドラ」です(特にパンドラはぼろぼろ泣きましたよ。いや、ホントの話)。

 んがしかし、今回私が上遠野氏の作品で特にお勧めしたいのは実はブギーPシリーズではなく、講談社ノベルズから出ている「殺竜事件」以下二冊だったりします!!

 これは本格的なファンタジー作品でありながらミステリーでもあるというとんでもない作品なのですよ。

 シリーズの一冊目にあたるこの「殺竜事件」の内容は、不死身のはずの竜がいかにして殺害(しかも刺殺)されたかという謎に調停士ED(エド)たち御一行が挑むというものです。さらに彼らは定められた期間の中で世界各地に散らばった七人の容疑者の中から犯人を探し出さなければならない。
 この犯人探しの旅の過程もまたとても面白いのですが、それ以上に私が感動してしまったのは作品オリジナルの世界設定が、事件に大きく、そして違和感なく関わっていることでした。

 例えば普通のミステリーではトリックの大部分が心理トリックや物理法則に即したものとなっていますよね。それは当然のことで、例えばもし現代日本が舞台であるミステリー小説で魔法や超能力によって被害者が殺されていたりしたら思わず「なんじゃそりゃ!!」と突っ込みますよね(もしかしたら本当にそんなミステリーもあるかもしれませんが、そんな本に出会ったらとりあえず私は突っ込んでみます)。
 しかし「事件シリーズ(勝手に命名)」の場合、舞台が異世界だから竜も魔法も全然OK。その上、文章力があり、世界設定がしっかりなされているので説得力もじゅうぶんある。感動すら呼び起こすほどに、それを強く実感させられたのはシリーズ三作目にあたる「紫骸城事件」でした。物語のラストで事件の真相が明らかになった時、私は本当に愕然とさせられましたからね(もちろん良い意味で、です)。

 そんな訳で、このシリーズはミステリー好きもファンタジー好きも両方が楽しめる作品になっているのです。

 ちなみに上遠野氏の作品と言えばそのほとんどがブギーPの世界とリンクしていることで有名(?)ですが、もちろんこのシリーズもさり気なく、しかしあきらかにリンクしている部分がありました。皆さんもその部分を探し当ててみてがいかがでしょうか?

(2004/8/29)

(この紹介文は楠 瑞稀の独断と偏見により制作されております。)