≪五万ヒット御礼企画≫
これは短編『過去からの贈り物』の番外編です。
06 生真面目
そのシンポジウムはかなりの白熱をみせていた。 「――つまりだっ、シルエットのみに注目を置いたそのフォルム、外皮をまったく無視した冷たい外観は、その時すでに失われつつあった自然を惜しみ文明世界に警告を送ることを目的とした一種の啓蒙的芸術品であったことが予測され……」
熱い討論が交わされるここは遠い昔に滅びた文明を解明しようと、いくたの研究者たちが自説を発表し、意見を戦わせる超古代文明シンポジウム。
「いや、金銭に関わるその問題はひとつの共同体が資金を出し合って製作するという文化があったとすれば解決するぞ」
権威ある学者たちは、気焔をあげ己の説の正当性を主張する。
「あのさぁ、お偉い先生方の白熱した議論に水を差すようなこと言っていいか?」 声をかけられた同僚は迷惑そうに、だけど同時に何かを察して怯んででもいるかのような態度でむっつりとうなずいてみせる。 「……言ってみろよ」
ライトに照らし出されるメタルカラーのボディ。
まさか自分もそう思っていたなどとは言えず同僚はひくりと口元を引きつらした。 「…………とりあえず、気付かなかったことにしようぜ。それ」 生真面目に意見を交わしあう学者たちの横で、メカニカルなデザインの犬型ペットロボットは機械の作動音を立てながら無心にボールにじゃれついていた。 |
06、「生真面目」……『過去からの贈り物』番外編
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