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≪五万ヒット御礼企画≫

これは短編『過去からの贈り物』の番外編です。


06 生真面目

 

 そのシンポジウムはかなりの白熱をみせていた。

「――つまりだっ、シルエットのみに注目を置いたそのフォルム、外皮をまったく無視した冷たい外観は、その時すでに失われつつあった自然を惜しみ文明世界に警告を送ることを目的とした一種の啓蒙的芸術品であったことが予測され……」
「意義有り! むしろ世界宗教における儀礼的な崇拝物であった可能性が高い! これはアニマティズムを背景に置いた呪物崇拝の形態のひとつにあたり、機械的にデフォルメされたことによりさらに超自然的な力を――、」
「待て、君のその解釈はおかしいぞ。それでは製作に費用がかかりすぎている。宗教的意味合いを持つ物ならばもっと万人が持ちやすいものである必要がある。不可解だ!」
「だがこれも大量生産品のひとつであることは疑いようもなく――、」

 熱い討論が交わされるここは遠い昔に滅びた文明を解明しようと、いくたの研究者たちが自説を発表し、意見を戦わせる超古代文明シンポジウム。
 今日はつい先だって『時空間物質転送装置』を用いて過去より取り寄せられた、ある“史料”に対する解釈が熱心に交わされていた。

「いや、金銭に関わるその問題はひとつの共同体が資金を出し合って製作するという文化があったとすれば解決するぞ」
「だが、この時代においてはむしろ共同体内の関係性は希薄であったとする研究論文はどう考える」
「ならばその共同体は少人数制の生活集団――いわば家族として機能していたと解釈すれば――、」
「やはりこれには一種の呪術的意味合いが付加されており――、」

 権威ある学者たちは、気焔をあげ己の説の正当性を主張する。
 誰もが一歩も引かない勢いである。

 
 そんな中、会場の片隅の席で黙って議論を聞いていたある若い研究者は、隣に座っていた同僚にそっと囁きかけた。

「あのさぁ、お偉い先生方の白熱した議論に水を差すようなこと言っていいか?」

 声をかけられた同僚は迷惑そうに、だけど同時に何かを察して怯んででもいるかのような態度でむっつりとうなずいてみせる。

「……言ってみろよ」
「俺、今回のあの“史料”は――ただの高価な玩具にしか見えないんだけど」

 ライトに照らし出されるメタルカラーのボディ。
 サングラスを思わせるセンサーアイ。
 左右に振れる尻尾。

 まさか自分もそう思っていたなどとは言えず同僚はひくりと口元を引きつらした。

「…………とりあえず、気付かなかったことにしようぜ。それ」

 生真面目に意見を交わしあう学者たちの横で、メカニカルなデザインの犬型ペットロボットは機械の作動音を立てながら無心にボールにじゃれついていた。

 

 

 

 

06、「生真面目」……『過去からの贈り物』番外編

 

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